相続登記をしない場合のデメリット
1 相続した財産の処分が困難となる
登記とはいわば不動産の名札のようなものです。
そのため、一般的に相続した不動産について売るなどの処分行為をしようとするときには、その不動産会社は登記の確認を求める場合が多いです。
仮にこのときに、相続登記が行われておらず、不動産の登記名義が亡くなった人のままであったときは、不動産会社から断られる場合もあります。
多くの不動産会社の場合は、ただ断るのではなく、相続登記を行うことができる専門家を紹介したり、名義変更の手続きを行ったり等のサポートをしてくれますが、やはり事前に続登記を行い名義変更をしておく方がスムーズに手続きをすることができます。
不動産の処分は時期が重要であることも多いですので、せっかくの良い機会を逃さないように相続登記を行うべきでしょう。
相続した財産を担保に銀行等の金融機関からお金を借りようとした場合も同様に、登記の確認を求められることが多いですので、相続登記をしていないと金融機関から融資を受けられないという可能性もあります。
2 所有権を主張する第三者に対して所有権を主張できず、その所有権を失う場合がある
複数人の相続人がいる場合、共同相続人間での遺産分割協議や被相続人が生前作成した遺言書で、被相続人所有の不動産を相続したとしても、相続登記をしていないと、その相続した不動産が自分のものであることについては第三者に対して「対抗」、つまり、その所有権を主張することが困難になる可能性があります。
つまり、不動産を相続したとしても、相続登記をしていないとその所有権を失う場合があるということです。
具体的な事例を挙げると、Aという人が亡くなり、その自宅不動産をその妻Bに相続させるという遺言書を作成されていましたが、AとBの子であるCには多額の借金があったとします。
このとき、被相続人Aの自宅についてBに相続させる遺言書について特にCが争っていなかったとしても、相続登記をしない間に、Cの債権者がAの自宅をCの持分(2分の1)について差押えを行い、差押えについての登記をした場合、遺言書が仮にあったとしても、Bは自分の法定相続分を超えた部分(Cの持分2分の1)についてその不動産の全てが自分のものであると主張することが困難になってしまします。
2019年の相続法改正前は、遺言書によって相続させるとされた不動産については、登記がなくとも第三者に対して対抗できるとされていましたが、改正により登記がない場合には、法定相相続分を超える分については対抗することができないとされました。
3 10万円以下の過料に処せられる可能性がある
令和6年4月1日から、相続登記は法的に義務化されています。
法律の改正により、原則として、自分が不動産を相続したと知った場合は、その時から3年以内に相続した不動産について相続登記を行なわなければならなくなりました。
このとき、法律が施行される以前に相続した不動産についても例外ではありません。
その場合の期限は、令和6年4月1日から3年以内(令和9年4月1日まで)に相続登記をする必要があります。
この期限までに相続した不動産について相続登記を怠ると、10万円以下の罰金に科せられる可能性がありますので注意が必要です。
このような過料を避けるためにも相続登記を行う必要があります。
参考リンク:法務省・相続登記の申請義務化に関するQ&A